関東大会1回戦…、

俺達氷帝は青学に敗れた。俺自身、手塚に勝利したことで満足していた訳ではな い。たが、この敗北は俺達の非力が招いたもの…。俺は努力をした。自惚れるつ もりはないが本気で2度目の敗北は無いと思った。口には出さなかったが忍足も、 宍戸も、向日も、とりあえず全員がそう思っていただろう。


















































「ゲームセットウォンバイ………越前リョーマ 7ー6!青学準決勝進出!」






































会場が歓声に包まれる。
既に失っている意識のどこか遠くで敗北を告げる声が聞こえたような気がした―…、


























++
























「クソ…ッ…!」








青学戦の翌日、昨日の試合の疲れとよく分からない感情とでベットから出ること が出来なかった。仕方なく身体だけ起こし座る形になる。俺様としたことが…情けねぇ、 どうしようもないこの気持ちを治める方法が分からない。自分の感情さえコント ロール出来ないなんて、どうかしてる。
しかし…、中学最後ともなる試合が終わる瞬間に意識が無いなんて、屈辱以外の 何物でもなかった。余計に俺を苛立たせる。思わず手近にあった花瓶を床に叩き つける。それは原形を留めない程に粉々に砕けた。





まるで俺の中学3年間のようだ、






ふと、そう思った。







「クク…ッ、」






無意識に笑みが零れる。それは自分に対しての嘲笑的な笑み…。そんな自分が急 に惨めに感じた。本当に、もう…なにもかもが狂ってしまった。










必死にレギュラーを守ってきた3年間も、









ただ一つの目標に向かってひたすらキツイ練習をしていた毎日も、









全国制覇という夢も…、










なにもかも、全て……終わったんだ。







不思議と涙は出なかった。 それほど実感が無いんだと思う。分かっているつもりだ。だが、頭がついてこね ぇ。今までの光景は二度と見れないなんて、信じられなかった。






――コンコン…、



ふいに扉をノックする音が静かに部屋に響いた。それにつられて顔を上げる。




「何だ…、」
「景吾様…お休みのところ申し訳ございません」
「急用でないなら後にしろ。」
様がお見えになっております」





、か……―、





「入れ」




俺が一言声をかければ「ありがとうございました、」と、扉の向こうからの 声がした。それからすぐに扉が開く音がして、廊下の光が真っ暗な部屋に差し込 む。



「景吾、」



が俺の名を呼び電気のスイッチを点けた。光に慣れていない目を細めの 姿を捉える。 は足元に散らばっているガラスの破片を見れば一瞬表情を歪めたがすぐに視 線を俺に向け、ベットの脇にある椅子に腰掛けた。ガラスの破片を踏まないよう に気を付けながら。




「身体……、大丈夫?」
「あぁ、」




相変わらず真っ直ぐと俺を見つめるに反して、俺はの顔を見れなかった 。…情けなかった、負けた自分を見られたことが。それは俺の汚点でしかなく、 出来ることならばその事実を消し去りたい。しかしながら、そんな事が出来るほ どこの世界は都合よく創られてはいない。





「昨日の試合、お疲れ様。…惜しかったね、」




はひとつひとつ慎重に言葉を選ぶように話す。それがこの上なく腹立たしい 。にではなく、に気を遣わせている自分が、



「負けは、負けだ。俺が勝っていれば…氷帝は負けることなんか無かった。」














俺が勝っていれば。














「結局最後に勝てなかった…!」














あぁ、なんて悔しいんだろう。














「俺達の3年間が、無駄だったみたいじゃねぇか…っ!」













怒り、怒り、怒り。
こうやってに向けようのない感情をぶつけることしか出来ない自分に怒りを 感じた。今、はどんな顔をして俺を見ているんだろう。同情?哀れみ?そん なものは、望んでいない。 気になった俺は目線だけをに向けた。は…、俺を真っ直ぐと見つめたま ま、静かに、涙を流していた。驚いた。こんな風にが泣くのを見たことが無 かったから。 大声で泣き叫ぶ事はあっても、静かに涙を流すなんて。の涙の意味は…?








「景吾……ッ、悔しいよね、あんなに…頑張ってた、のに…っ!」







次々と溢れてくる涙はシーツに小さな染みをつくっていく。







「景吾が、負けちゃうなんて…っ、夢にも思わなかった…!」





























「でも…!まだ、景吾には高等部での3年間が、残ってるじゃん…っ。諦めないで よ……、中学3年間が無駄だったなんて、言わないでよ……ッ。私、また…景吾が 試合してるとこ、見たいよ…、」









の声が、言葉が。俺の心を揺さ振る。
そうだ。俺が感じている苛立ちの理由が分かった。それは、惨めな姿を晒したこ とじゃない。…無意識に、勝利を諦めていた自分に対しての、苛立ちだった。





……。」





小さく彼女の名を呼べば、震える身体を抱き寄せた。それを合図には、嗚咽 を漏らしながらボロボロと涙を流し始め。俺の服を濡らした、そんな彼女が酷く 愛しかった。抱き締める力を強めれば、俺の目から涙が一筋、頬を伝った…。



















(不器用な俺は君の涙を見てようやく悲しいんだと理解する。)




――――080622


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今更このネタ・・・(笑)