ある日の放課後―――・・・。
「今日の部活はここまで!1年は片付けして置くように。解散っ!」
「「「「ありがとうございましたっ!」」」」
跡部の一声で、集まっていたテニス部員がバラバラに散っていく。
しかし、R陣だけはその場に残って話し始めた。
「なぁなぁ、侑士っ!今日って夏祭りあるよな?」
「あぁ・・・そう言えば、あったっけなぁ。」
「祭りあんの!?楽しそうだC−!」
珍しく覚醒しているジローが、向日と忍足の話に割り込んだ。
向日は、待ってましたとばかりに目を輝かせて喋りだす。
「じゃあさ、全員で行こうぜ!大勢の方が盛り上がるしな。」
「良いんちゃう?予定が合えば、やけどな。」
そう言って、忍足は話に加わっていないメンバーに視線を移した。
「俺は、予定無いんで良いっスよ。」
「お!じゃあ、鳳は決定な。宍戸は?」
向日がそう言うと、視線が宍戸に集まる。
宍戸は話しづらそうに言った。
「悪ィ。俺、先約入ってんだよな。」
「先約?誰なんだよ、それ。」
向日は、少し不満げにそう言った。
その時、背後から誰かが走って来た。
「亮!待った?」
走って来たのは、小柄で可愛らしい雰囲気の女の子。
ただ、宍戸以外のメンバーは目の前の女の子が誰なのか分からずに、2人を見比べる事しか出来なかった。
「あ、あぁ。全然待ってねぇから、大丈夫だぜ。」
「そっかぁ〜。良かった♪」
目の前で繰り広げられている会話を聞いて、R陣はさらに驚いた。
宍戸は、女嫌いで有名だったからだ。
そんな2人の会話をさえぎるように、忍足が口を開いた。
「なぁ、宍戸。その、可愛いお嬢ちゃんは誰なん?」
「えっと・・・、その・・・。」
「それは、俺様から説明してやるよ。」
「あ!景吾♪久しぶり。」
口ごもってなかなか答えようとしない宍戸の後ろから、跡部が声をかけた。
「跡部もコイツと知り合いなのかよ?」
自分が知らないことが不満なのか、少し不機嫌な向日が来たばかりの跡部に聞いた。
跡部は、まぁ落ち着けよ。と向日をなだめた。
「つか、お前。自己紹介くらい、自分でしろよ。」
「あ、そうだった。私はって言いますっ。ヨロシクね。」
ニコっと笑いながら、自己紹介をするにR陣は目が釘付けになった。
んで、と跡部は付け足した。
「宍戸の彼女だ。ついでに俺の幼馴染だ。」
「そゆ事。」
「「「「えぇ〜!!?」」」」
がニコっと笑った瞬間、R陣の声が日の暮れ始めた空に響いた。
ずっと黙っていた宍戸が、やっと口を開いた。
「んで、跡部の紹介でと会ったって訳だ。」
「ねー♪」
「ちょっ!っ!くっつくなよ!」
「亮・・・嫌なの・・・?」
は目に涙を溜めて(フリをして)宍戸を見上げる。
その姿を見て、宍戸は目に見えて慌てだした。
「ちがっ!違うんだ!そのっ・・・」
それを見かねた跡部が仲裁に入る。
「おい、。下手な演技はやめて、さっさと学校出やがれ。」
「あ♪やっぱりバレてた?」
「・・・演技かよ。」
宍戸は一気に疲れた様子。
まぁまぁ。
そう言って、は宍戸をなだめている。
「じゃあ、そろそろ行こうよ。」
「あぁ、そうだな。じゃ、お先。」
宍戸の手を取りながら、は後ろを振り返って手を振っている。
2人を見送った後、その場に残ったメンバーで話し出した。
「・・・なんちゅーか・・・」
「俺ら、完璧に忘れられてたぜ。」
「バカップル、丸出しやなぁ。」
「まぁ、しょうがねーよ。アイツら、今日で付き合い始めてちょうど1年だからな。浮かれてんだよ。」
「それにしても、ちゃん・・・可愛かったC−。」
「ホンマやわ。何で、俺に紹介してくれへんかったん?」
「アーン?しょうがねぇだろ。が宍戸に一目惚れしたんだよ。」
「何やねん・・・羨ましいわぁ、宍戸。」
++
亮を迎えに氷帝に行った後、私達は近くでやっているお祭りに来た。
このお祭りは、私にとって思い出の場所なんだ。
「ねぇ、亮!どれから行く?」
「まずは、あんず飴からだろ!」
「うんっ!じゃ、行こ。」
++
一通り回ったあと、アナウンスが入った。
【5分後から、打ち上げ花火を行いたいと思います。場所は〜〜〜〜・・・・】
「花火っ!行こう、亮!」
「だな。行くか。」
私と亮は目的地へと、足を運んだ。
でも、人が多くて亮とはぐれちゃった・・・・・・。
「亮っ!!どこ〜?」
「!」
私がキョロキョロしていると、姿が見えないけど亮の声がした。
気が付いたら、私は亮の腕の中に居た。
「亮っ!」
「ったく、離れんなっつーの。心配すんだろっ!」
「ご、ごめん・・・。」
そして、私達は再び歩き出す。
けどやっぱり人が多くて、はぐれそうになった。
そんな時、
困っている私を見かねて、亮が左手を出した。
「・・・亮・・・?」
「ほら、またお前がはぐれるだろ。だから手ェ握っとけ。」
普段はそんな事言わない亮の言葉が嬉しくてつい、ニヤけちゃった。
私は、差し出された亮の左手に自分の右手を絡めた。
・・・・・・俗に言う、『恋人繋ぎ』ってやつ。
「は、早く行かねぇと花火、始まるぜ。」
「うん、早く行こっ!」
私達は、手を繋いで歩き出した。
これでもう、はぐれないね。
って言いながら。
繋いでる右手から、亮の優しさが伝わってくる気がした。
私の気持ちも、亮に伝わってるかな?
++
それから、ちょっと歩いたトコで目的の場所に着いた。
―――この場所・・・懐かしいな。
ふと、そんな事を思った。
そんな私の思考をさえぎる様に、夜空に大きな花火が上がった。
「お、始まったな。」
「わぁー・・・。綺麗。」
ねぇ、亮。
覚えてる?
「ここの花火って、毎年凄いよなー。」
「うん。そうだね。」
私は、忘れた事なんて無いよ。
だってここは・・・
「なぁ、。」
「え!?な、何?」
「去年の事、覚えてるか?」
「え・・・?」
覚えててくれたんだ。
「もちろん。」
「俺も。ちょうど一年、かぁ。」
「何か、凄いね。」
「え?何がだ?」
私の言っている事がよく分からないのか、亮はキョトンとしている。
私は、説明するかの様にゆっくりと話し出す。
「ちょうど去年の今、この瞬間に私達の想いは通じ合ったんだよね。」
「・・・。」
しばらくの沈黙。
聞こえるのは、いまだに上がっている花火の音だけ。
「。」
「ん?・・・って、ちょっ!?」
いきなり、亮が私の名前を呼んだかと思うと亮に抱き寄せられた。
「一年経っても、俺の気持ちは変わらない。、好きだ。これからも、俺の傍に居てくれ。」
亮の気持ちが、嬉しかった。
亮の背中に回している手を強く握った。
「私も・・・亮が好き。大好き。頼まれたって絶対に離れないから。」
私が言い終えた瞬間、最後の大きな打ち上げ花火が上がった。
・・・―――花火をバックに見えた私達の影は、一つだった――
打ち上げ花火
(あ!花火終わっちゃった!)
――――071112 再録