放課後、俺はに話があると呼び出された。
とは2年前から付き合っていて、今じゃ学校公認の仲だ。
・・・何か、嫌な予感がしたが行かない訳にはいかないと思って、指定された教室に走った。
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「ごめんね。いきなり呼び出して。」
は、申し訳無さそうな顔をした。俺は、のこの顔が苦手だ。
「いや、どーせ暇だったし。で、何か用あんだろ?」
「・・・・・・よ・・・。」
「え?聞こえねぇよ。」
「別れよう。」
今度ははっきりと、そう言った。
・・・・・・え?聞き間違い、じゃないよな。
何でだよ、。
「・・・・・・な・・・んで、だよ。」
やっと出た言葉。口を開くのも精一杯だった。
・・・・・・。は何て言うだろう。
自分で聞いたのに聞きたくない、と思った。激ダサだな、俺。
「・・・。理由・・・?そんな事一つしか無いじゃない。嫌いに、なったの。亮の事が。」
頭が真っ白になった。昨日までのお前は何処に行ったんだよ。
は、前から俺の事嫌いだったのかよ?
「・・・・・・。じゃ、そーゆー事だから。・・・バイバイ。」
「・・・!なんで・・・・・・。」
は、走って教室から出て行った。
アイツは俺の事嫌いなはずなのに、嫌いって言ってたのに・・・・・
「なんで・・・・・・、お前が泣くんだよ。」
あの時確かに見たんだ。走って教室を出て行くの目に、涙が浮かんでいたのを。
クソッ!フラれたはずなのに、何かが引っかかる。何なんだよ、この気持ち。
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「亮・・・・・・。」
ごめんね。あんな事言って。
でも・・・・・・こうするしか無かったんだよ。本当にごめん。
「先輩・・・。」
「長太郎。私、最低だね・・・。」
「そんな事無いですよ。ただ・・・」
長太郎の言いたい事は、すっごく分かる。でも、これだけは・・・・・・
「こればっかりは、駄目。亮に本当の事を言うのは。」
「でもっ!宍戸先輩は先輩の事、本気で思ってるんですよ!!」
そんなの、分かってるよ。私だって亮の事大好きだもん。
あんな事言ったりするのも、演技だって分かってても辛かったよ。
亮に告白されて、付き合い始めて、毎日が本当に楽しかった。私の思い出は亮の事でいっぱいなんだよ。
でも・・・。だからこそ、言わなきゃいけなかったって思うんだ。
「私がフランスに行ってる5年間、亮の事束縛するような事はしたく無いの。」
私がそう言うと、長太郎は悲しそうな顔をして黙り込んでしまった。
本当に私は最低だ。
私の事、本気で思ってくれてる人と、本当に心配してくれている2人を傷つけているんだから。
「・・・わかりました。先輩がそこまで言うなら・・・。でも、せめて俺だけでも見送らせて下さい。」
そんな事してくれたら行く事渋っちゃうよ。
って言おうとしたけど、言うのを止めた。
そこまでして長太郎の好意を踏みにじる事な無いかなって思ったから。
「・・・分かった。じゃあ明日。バイバイ。」
そう言って、私は長太郎に背を向けた。
明日にいきなりって言うのもどうかなって思ったけど・・・。急な話だったから。
それは、今日から3日前の突然の出来事から始まった。
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「え!?それは本当なんですか?」
今日から3日前、私は校長室に呼び出されていた。
何か悪い事したかなぁ?と思いつつ向かったら、それは思いもよらない話だった。
「あぁ。本当だよ。フランスのデザイナーが君の作品をえらく気に入ってね。是非来ないかと言ってきたんだ。」
言い終わってから校長は、あぁと言い、付け加えた。
「そういえば、君は将来デザイナーになりたいと言っていたね。」
「はい。小さい頃からの夢なんです。」
「フランスで勉強すれば、デザイナーへの道に一歩近づくと言っても良い。どうかね?行ってみてはどうだい?」
「・・・・・・。」
私はすごく迷った。
親と離れて暮らすのも不安だった。
友達と離れるのもすごく寂しい。
それになにより、亮と離れるのが本当に嫌だった。
でもやっぱり、私は夢を捨て切れなかった・・・。
「行きます。行かせて下さい。」
私はそう答え、急な話だが4日後に出発と言われて準備を進めてきた。
ただ1つのことを除いては・・・。
そして、さっきの亮との会話に戻る。
私が、ただ1つやりのこしていた・・・いや。きっとわざと最後まで残していたのかもしれない。
亮に別れを告げる事・・・それは、私の最後のけじめだった。
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その日の夜、私は亮の事が忘れられないでか、
明日からの生活に不安を感じているからなのか分からないけど、寝付けなかった。
―――嫌いになったの。亮の事が。
―――じゃ、そーゆー事だから。・・・バイバイ。
―――宍戸先輩は、先輩の事、本気で思ってるんですよ!!
私、なんて事言ってるんだろう。今頃になって気が付くなんて・・・バカだなぁ、私。
・・・今まで、亮と過ごしてきた日々がそれだけのものだったのかなぁって思う。
長太郎もあんなに必死になってくれてた・・・。
いつもは、誰に対しても優しい長太郎。あんなに怒鳴らせちゃったのは私のせいなんだね。
みんな、ごめん。
ごめんなさい・・・・・・。
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「よし、準備OKかな。」
いよいよ出発の朝。空港までは長太郎と行く事になっている。
「ふぅ。・・・そろそろ、出ないとね。」
名残惜しいけど。
一生帰って来ない訳じゃあ無いからね。
「お父さん、お母さん行って来ます。」
「何かあったら、すぐに連絡してね?」
「気をつけてな。」
「ありがとう。じゃ、行って来ます。」
お父さんとお母さんに見送られて、私は家を出た。
お母さん・・・・・・泣きそうだったな・・・。勝手な事ばっかりしてごめんなさい。
でも、心配しないで。私は元気に帰って来るからね。
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それから10分位歩いた所に長太郎と待ち合わせをした公園がある。
私が着いたころにはすでに長太郎はそこに居て、携帯をいじっていた。
「長太郎!ごめん、待った?」
「あ、先輩。おはようございます。俺も今来た所なんで平気ですよ。」
「そう?じゃ、行こっか。」
「はい。」
こんな普通の光景がもう、しばらく見れないと思うとちょっと寂しいな・・・。
5年・・・かぁ。長いよな。
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空港に着いてから、少し時間があったから搭乗ゲートの前の椅子で喋っていた。
そうしているうちに、アナウンスが流れた。
「フランス行きの便をご利用のお客様は、搭乗ゲートまでおこしください。」
・・・。いよいよ、か。
「あ・・・。もうそんな時間か。」
「・・・・・・そう、ですね。」
長太郎、そんな顔しないで・・・。
私だって寂しいよ。皆と離れるの嫌だよ。けど・・・・・・
「長太郎。」
「何ですか?」
「亮を、よろしくね。私からの最後のお願い。」
お願い。
亮の事を大切にしてくれる子を見つけて幸せになって・・・。
「先輩・・・。すいません。」
「え?何で謝るの??」
私は訳が分からなかった。
何でいきなり長太郎が私に謝るんだろう・・・?
長太郎は悪戯っぽく笑って、携帯の画面を私に見せた。
「っ!!」
「すいません。やっぱり俺、尊敬する先輩の事放っておけなくて。メールしちゃいました。」
長太郎が言い終わると同時に私は後ろを振り返った。
まさか、とは思ったけど。嫌な予感ほど、よく当たるってね。
そこには・・・・・決して此処に居るはずのない人物が立っていた。それは・・・
「りょ・・・・う・・・。何で・・・。」
「何でって・・・それはこっちの台詞だっつーの。」
亮はきっと走って来たんだ。
すごい息が荒い。来てくれたんだ、私なんかのために・・・。
「せっかく・・・吹っ切った・・・のにっ!!ど・・・して・・?」
「何で俺に何にも言わないんだよ!!」
「いつ帰って来るか分からない私より・・・亮のことを大切にしてくれる子と・・・幸せになって欲しいから・・・・・。」
言葉はそこで途切れた。
そして、気が付いたらいつのまにか亮の腕の中に居た。
やっぱり・・・亮と居るのが、一番安心する・・・。
「お前の、俺に対する気持ちはそんなもんなのか?」
違うよ・・・亮。
私は、亮が思ってるよりもずっと亮の事・・・・・
「俺は、もうが居ねぇと駄目なんだ。俺はが思ってるよりもずっとの事、好きなんだよっ!」
亮・・・。私達、同じ事思ってるんだね。
それがなんだか、嬉しくて、亮に見えない様に小さく笑った。
「が居なくて、幸せになんかなれる訳無いだろ。」
私もだよ、亮。
言おうとしたけど・・・口が動かなかった。
私は、拳を握る力をさっきより強めた。こうでもしないと泣き出してしまいそうだから。
「だから・・・。絶対に、絶対に俺の所に戻って来い。俺は何年だろうとの事ずっと待ってるから。」
「りょ・・・・・・うっ!!ありが、と。絶対にっ、絶対、亮の所に・・・戻ってくる、からっ!」
泣かないって決めてたのに・・・。
気持ちでは、泣いちゃ駄目って分かってるのに。
涙がとまらない。
亮が来てくれたから、私、向こうでも頑張れそうだよ。
私、あんな事言ったけど・・・。
やっぱり亮が居ないと駄目だって。
大切な物は、なくしてから気づくんだね。
顔は見えなくたって、私はいつも貴方の事を思い続ける。そして、また一緒に笑い合おうね?
Good-bye,My Love
(帰ってきたら激ダサって、迎えに来てね。)
――――071111再録