「岳人!!」
「ん?・・・あぁ、か。何だよ?」
岳人は、ちょっと眠そうに答えた。
テニス部の朝練って、かなりキツそうだしなぁ。
・・・ちなみに、私は家庭科部。
本当は、帰宅部希望だったんだけどね。
友達のA子(笑)に誘われて嫌々入った。
まぁ、慣れてくれば結構楽しかったりするんだけどね!
って!家庭家部の事はどーでも良い!
しばらく、ワールドに入り込んでた私を不思議に思ったのか岳人が私の顔を覗き込んできた。
・・・それにしても、岳人って小っちゃいな。
私と1センチしか変わらないけど!
「そうそう!!聞きたいことがあって!」
「聞きたいこと?」
岳人は、やっぱり眠そうに私の質問に対して聞き返した。
えっと、いきなりなんだけどさ。
そう言って私は話し出した。
「ファーストキスってどんな味なの?」
「んな!?何だよいきなり。」
私が喋った瞬間、岳人は驚いた顔をした。
「だから、いきなりだけどって言ったじゃん。」
「そーゆー問題なのかよ。で、何でそんな事聞くんだよ?」
「うーん・・・。世間一般に、ファーストキスはレモン味〜とか、言うじゃん?それって本当なのかなって。」
私がそう言うと、岳人は表情を変えないで答えた。
「俺、キスなんてしてねぇし。」
「なんだぁ〜。岳人って、モテるからとっくに経験済みかと思ってた。」
ん?
何か今、安心した・・・?
私・・・岳人の事が・・・・・・好き、なのかな。
今まで気づかなかったけど、私は・・・岳人が好きなんだ。
どうしよう。
私、今まで好きな人とか出来た事無いからどうすれば良いのか分からない・・・!
++
休み時間
誰かに相談しようと思って来たのは、隣のクラス。
私はキョロキョロと教室の中を見回した。
「えーっと・・・誰が良いのかなぁ?うーん・・・」
私が教室の前でうなっていると背後に、偉そうな気配を感じた。
もちろん、それは・・・
「教室の前で何やってんだよ、アーン?」
「跡部!」
そう。
俺様何様跡部様でした!
いいや、跡部で。
「ちょっと来て!相談したい事があるの!!」
「あーん?珍しいな、が俺様に相談なんて。」
跡部はちょっと笑いながら、私の後について来た。
向かう先は、私の教室。
++
「で?何だよ、相談って。」
教室に着くなり跡部はに聞いた。
は、一呼吸置いて話し出した。
「あのね・・・私、岳人の事が好きみたいなの。」
「(好きみたいなのって・・・今まで気づいて無かったのかよ。)・・・で?俺にどうしろと?」
「どーすれば良いの!?跡部なら分かるでしょ?」
お願い!と、は顔の前で手を合わせた。
「じゃあ、何か取引だな。タダじゃ、なぁ?」
そう言うと跡部は、を横目で見た。
は、ハッと気づいた様に鞄の中をあさり始めた。
「はいっ!期間限定の飴!」
「・・・そう言う事じゃねーんだけど。・・・いちごみるく味?却下。」
そう言うと跡部はに、手に持っていた飴を投げ返した。
はそれを受け取ると、飴を出して口に入れた。
「えー?美味しいのに。」
「・・・で、何だっけ?相談って。」
跡部はわざとらしく聞き直した。
視線は教室のドアへと向けられていた。
「だぁ〜かぁ〜ら!私は、岳人の事が好きでっ!!」
「だとよ、向日。さっさと出て来いよ。」
「え!?」
跡部が喋り終わった途端、教室のドアが開き、向日が入って来た。
跡部は、フッと笑って教室を出て行った。
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・あ、あのさ。」
長い沈黙を打ち消す様に、向日が口を開いた。
はいきなり声を掛けられたのでビクッっと肩を震わせた。
「な、何?」
「そのー・・・、さっき跡部と話してた事って・・・本当なのか?」
「き、聞いてた、んだ。」
「あっ!そのっ、たまたま通りかかったら、と跡部の声が聞こえてきて・・・。」
別に、聞くつもりは無かったんだよ。と慌てて答えた。
は、大きく深呼吸をして向日に向き直った。
「ほ、本当だよ。私、岳人の事が好き。」
「!?本当、なのか?、が・・・?」
不安そうな向日の顔が、の言葉でみるみるうちに笑顔に変わっていった。
そして、俯いて椅子に座っているに飛びついた。
「っ!俺も好きだぜ!大好きだっ!」
「ちょっ!岳人!?」
向日はその体勢のまま、に顔を近づけて、キスをした。
は突然で驚いたらしく、顔を真っ赤にさせて手で顔を覆った。
「あ!そーだ。まだの質問にちゃんと答えてなかったな。」
「質問・・・?」
は、何の事か分からずに疑問符を浮かべていた。
そんなに笑顔を向けて、向日は話し出した。
「ファーストキスは、いちごみるくの味、だな!」
いちごみるく
(さようなら私のファーストキス。)
――――071112 再録