大好きだった。
この世の何にも変えがたい位。
それなのに。
それなのに、俺はアイツを守れなかった。
あの時、俺が時間通りにの所に行ってればあんな事にはならなかったんだ。
の16歳の誕生日。
部活が休みで、折角だから、と2人で出かける為に駅前の十字路で待ち合わせをしていた。
俺は、待ち合わせ前にへのプレゼントを選んでいた。
それ位買わせとけば良かったんだが、好きな奴のプレゼント位、自分で買おうと思った。
結局、俺はの為に指輪を買った。
そのせいで、5分遅れてしまったが。
俺は、の喜ぶ顔を思い浮かべながら待ち合わせの場所へと急ぎ足で向かった。
これから起こる事を知りもしないで。
++
「!」
「景吾!」
不安そうに一人で居たを見て、俺は迷わず声をかけた。
俺に気が付くとは嬉しそうに笑って、こっちに向かって歩いてきた。
俺達は、横断歩道が青になるのを待っていた。
青に変わると、俺は思わず走り出した。
は、さっきの笑顔のまま歩き出した。
でも、そんな時。
信号無視した一台の車が、8歳位の子供に突っ込んでいった。
俺が動き出そうとした時には、すでに・・・・・・
が走り出していた。
そして・・・はその子供をかばって・・・倒れた。
俺は、頭が真っ白になった。
「!!!!」
「・・・け・・・、ご・・・」
俺が、の名前を叫んでいる中で微かにの声が聞こえた。
「!あまり喋るな!」
「景吾・・・。さっきの・・・男の子、は・・・だ・・・いじょうぶ?」
「あぁ。かすり傷だけだ。」
俺がそう答えると、は息苦しそうに笑った。
「私に・・・プレゼント、・・・・何・・買って、くれた・・・の・・・?」
「指輪だ!俺達、結婚するんだろ?!!」
「ほ・・・んと?・・・あり・・・が、と。嬉しい・・・。でも・・・。」
は一度、息を吸った。
「それ・・・は、景吾が・・・私以外の・・・好きになった子に、あげて・・・ね?最期の・・・やく・・・そ、く・・・。」
そう言ったの身体は・・・冷たかった。
さっきまで握っていた手も、俺の手からスルリと滑り落ちた。
嘘だろ・・・。
「!!俺が愛してるのは、しかいねぇんだよ!!!」
俺はその場に崩れ落ちた。
++
あれから、ちょうど一年経った。
の17歳の誕生日。
が言った、最期の約束。
あの約束は守れそうにない。
あの時、渡しそびれた指輪。
今でも俺が持っている。
「なぁ、。
あの時、お前が命懸けで助けた子供は今でも元気だってよ。
【あの時助けてくれたお姉ちゃんの為にも、精一杯生きる】って・・・。
泣きながらっ・・・そう・・・言ってた・・・・・・。 俺はっ・・・・・・。」
思わず涙が零れた。
この一年間、ずっと我慢してきた。
泣きたくても、泣けなかった。
俺が泣いたらは、本当に居なくなってしまいそうで。
きっと俺はどこかで、はまだ生きていると思っているのかもしれない。
目の前で、愛する人を失う気持ちは計り知れない。
俺の中で張り詰めていた何かが、切れた。
俺は声を上げて、泣いた。
もう、どうしようもなかった。
泣いて、泣いて、涙が枯れるほど、泣いた。
みっともないとか、そんな考えは今の俺には無かった。
しばらくして、やっと落ち着きを取り戻した俺。
「情けない所、見せちまったな。」
俺はの墓に向かって、言った。
「・・・・・・。」
そう言って俺は、たくさん置いてある花束の上に指輪が入った小さな箱を置いた。
「俺は、まだ・・・お前を愛してる・・・・・・。」
そう言うと、俺はの墓に背を向けた。
約束
(あいつが安心できるように悲しみを閉じ込めて振舞うんだ。)
――――071112 再録